外で傷ついた動物を見つけた場合 - 1
2015.07.17
当院を含め、動物病院は「飼育動物」の治療を行います。「飼育動物」ですので個々に飼い主さんがいらっしゃって、治療の方向は飼い主さんとの相談の元に行われます。
今回はケガをした、もしくは何かしら状態の悪い「野生動物」を発見された場合の話です。
それが「野生鳥獣」であった場合、さきに述べた「飼育動物」ではないため、その取扱は「飼育動物」とは異なり、注意が必要です。発見された方はこの場合、「飼い主さん」にはなりえません。治療後もその子を飼育することはできません。
発見した動物が保護の必要な「野生動物」に含まれるか否か、は「鳥取県の野生鳥獣救護に関して」
http://www.pref.tottori.lg.jp/209479.htm#itemid778986
を参照し、県の当該部署に先ず連絡をとって指示を仰いでください。
「野生動物」の治療は県指定の救急病院等、があり、県からの委託を受けて治療を行うことになっております。当院はこの県指定の救急病院になっておりませんので、野生動物の治療を勝手に行うことができません。
治療が必要そうな「飼育動物」以外の動物を発見された場合は、それが「野生動物」に含まれるのかの確認を含め、まず県の担当課の方に連絡をお願いします。
鳥インフルエンザの可能性を考え、それが野鳥の場合は気軽に触れないように気を付けてください。
外で傷ついた動物を見つけた場合 - 2
2015.07.17
ケガをした、もしくは何かしら状態の悪い「野性鳥獣以外の飼育動物になりうる動物」を「オーナーさんでない方が」発見された場合の話です。
例えば飼い主不在と思しき、なにかしら状態の悪い外ネコさんを発見された方がそのコの治療を依頼したい、といった場合です。
診察開始に当たって当院ではそのコを連れてこられた方が、そのコの実際の飼い主である、ない、に関わらず、今そのコの治療を希望されている方として、そのコの飼い主であるという認識で対応させていただき、重要な判断はその方に仰ぎながら、その方と伴に治療を進めさせていただきます。
治療をおこなわれる当事者であるワンちゃんなりネコちゃんは自らの治療に関する意思表示を当然自分で行うことができないですし、加えて治療を行う我々の側も治療の途中で生ずる重要な意思決定を飼い主さん不在の状態では行うことができない場合があります。
治療に関する意思表示、もしくは意思決定とは(現状が死という最終的なことに直結している、いないは別にして)、治療の程度、つまりどこまでやるか、いつまで継続するか、という判断を行うことを含みます。そのとき行っている治療を継続することは、例えばその子の性格により、もしくは飼い主さんの状況にとって必ずしも最善と言えないことがあるからです。
この様な状況で治療を必用とするコをつれて来院される方は、上述の内容に関して充分御理解のうえ来院下さい。
健康診断をしましょう
2015.07.04
ワンちゃん、ネコちゃんのおおよその年齢は以下のように計算します。
1.最初の約1年半で20歳になります。
2.2年目以降は1年で4歳年をとります。
ですので、ワンちゃんネコちゃんの6歳は 人で20 + 4 x 5 = 40 で40歳となります。ヒトでも40を超えると市町村から健康診断をしましょう、というお知らせが来ますよね。6才以上のワンちゃんでは春のフィラリアのシーズンにフィラリアチェックの採血を行っていますが、その際に血液検査による健康診断をお勧めしています。もちろん年内のいずれの時期についても健康診断は可能です。
7歳以降のネコでは「慢性腎不全」がちらほらみられるようになります。お水をよく飲むようになる、おしっこの量が多い(多飲多尿)という状態がみられるようになったら、この病気を疑ってみる必要があります。
ちなみに「多飲多尿」は糖尿病、副腎、甲状腺といったホルモンの臓器の疾患や、イヌの未避妊のメスでは子宮蓄膿症などを代表とする多くの病気のサインです。
6.7歳以下で健康診断を希望される場合は、レントゲン検査が勧められます。心臓、肝臓などのサイズを確認し、これら臓器の生まれつきの異常、継時的な大きさの変化をみます。泌尿器ではレントゲンで写る結石の有無をみます。
10歳近くの特に小型犬で、1)最近散歩の距離が短くなり、それ以上歩きたがらなくなった、2)安静にしているのに呼吸がおかしい時がある、3)特に夜から朝の時間にかけて咳をしていることがある、などのサインが見られる場合は、レントゲン、エコーによる心臓のチェックをお勧めします。
歯の検査をしましょう
2015.07.04
イヌ、ネコでは歯の問題は人の虫歯で連想する歯の表面の穴があくことよりも歯の根元の根腐れが問題となります。口腔内に存在する悪玉菌によるこの歯根の根腐れは、歯の根元だけでなくそれを支える頭やあごの骨もとかします。進行すると「口鼻瘻」という歯の付け根から鼻までぬける穴になって常に鼻炎をおこして血液をともなう膿をくしゃみで出すようになったり、頬の皮膚に穴があき血まじりの膿をだしたり、涙管を通して目の方に膿が出るようになったりします。
歯垢が歯石の状態になると歯の付け根に歯垢が入り込みやすい隙間をつくります。ご自宅での歯のケアは歯垢までならできますが、歯石になってしまうと病院で削り取る必要があります。
歯の根元の膿が鼻に入ったのち、鼻汁と共に誤嚥して肺に入ると細菌性の肺炎に移行する可能性があります。歯の根元の膿だまりは近くの血管に細菌を供給する元となります。そこから血流に入った細菌は心臓の内膜に炎症を起こす細菌性心内膜炎や、脊椎の血管に至り脊椎を溶かして脊髄神経の圧迫をおこす椎間板脊椎炎の原因になるとも言われています。
歯石の形成は悪い細菌が口腔内で主に増えている証拠と判断しても良いです。歯石を除去し、歯垢、即ち悪い菌の管理を行う事が歯のケアとなります。
健康診断をしましょう - 3
2015.07.04
10歳近くの特に小型犬で、1)外を散歩する子の場合、最近散歩の距離が短くなり、それ以上歩きたがらなくなった、2)安静にしているのに呼吸がおかしい時がある、3)特に夜から朝の時間にかけて咳をしていることがある、などのサインが見られる場合は、心臓のチェックをお勧めします。
胸部の聴診をおこなった際、心臓にそれまで聴こえなかった「雑音」が聴かれるようになったなら、心臓の弁の病気を疑ってみる必要があります。心臓の、特に左側の「血液を受ける部屋」と「血液を吐き出す部屋」の間の一方向性の弁が加齢性にぴったり閉まらなくなるため、そこを逆流する血液の音が「雑音」として聞こえているのかもしれません。追加検査としてレントゲンとエコー検査が必要です。レントゲンでは弁のしまりが悪くなり、効率よく血液を送ることのできなくなった結果として大きくなった心臓のサイズと形を評価します。エコーではしまりの悪くなった弁の様子、そこで起こる血液の逆流の様子、逆流により大きくなった「血液を受ける部屋」のサイズ、「血液を吐き出す部屋」の収縮の様子などを評価します。
診断が下ったのちに外科的治療ではなく内科的維持を選択する場合は、心臓の内服薬を開始することになります。この場合、まさに「維持」で、「肺水腫」であるとかのさらに進んだ、命に係わる状態になるべくすぐに陥らないように管理するのが目的です。
当院の「夜間診察」に関して
2015.07.03
当院では木曜の休診日と午後休診の日曜、祝日を除いた平日(土曜日を含む)の21:00~23:00の間の時間帯で「夜間診察」を受け付けております。これは前日までの電話予約でご相談いただいた診察内容に関して診させていただくものです。
狂犬病ワクチンや混合ワクチンの接種、爪切り、肛門嚢しぼり、耳処置などの通常のケア、そして緊急性はないのだけれどみてほしい症状など、日中の通常診察で診るような内容を「夜間診察」では診させてていただきます。
お仕事の都合で平日の診療時間の来院が難しい方は土曜終日と日曜の午前中も診察を行っておりますが、週末も含め日中の都合がつかない場合に「夜間診察」をご活用ください。
避妊に関して
2015.07.01
避妊というと、元気な子なのになんで手術しなければならないの?かわいそう!という意見を聞きます。
避妊は単に今飼われているコの子供をとる、とらない、といったことのみではなく、今飼われているコ自身の将来にかかわります。
イヌ(非常にまれにネコ)の子宮蓄膿症は子宮に膿がたまり敗血症で亡くなる病気です。基本的に緊急手術となりますが、その時高齢になっており心臓や腎臓等に問題があれば、一か八かの手術となります。性周期に関連した病気なので、避妊手術で予防できます(未避妊のワンちゃんは死ぬまで性周期が持続します)。
ウサギに多い子宮の腺種は肺に転移しやすく転移すると呼吸困難になりますが、ウサギは呼吸が苦しいことを表にあらわさないので呼吸困難が表面上明らかな時にはかなり進んでおり、病院に連れて行くためキャリーに入れる、病院で診察する、といったストレスでも簡単に亡くなる可能性があります。予防としてウサギでは卵巣摘出のみではなく子宮摘出を含む避妊手術が必要です。
乳腺腫瘍は殊にネコで悪性のガンであることが多いですが、悪性の乳腺ガンの悪いところはウサギの子宮腺癌同様に他の臓器、殊に肺に転移しやすいことです。乳腺腫瘍は最初の発情(5~6か月齢ごろ)の前までに避妊手術をすれば、100%と言えないまでも非常に高い確率で乳腺腫瘍の発生を抑える、といわれています。
避妊は健康な状態を後まで維持するための手術なのです。そして手術は、殊に全身麻酔が必要であれば、一般的に若くて健康であれば安全に行うことが出来ます。当院ではイヌ、ネコの場合6~7か月以降から遅くても5~6才までの避妊をお勧めしています。
去勢に関して
2015.07.01
男の子の去勢は、特に家ネコちゃんでは年頃になるといろんなところにおしっこをすることを止めるため、という意味があります(注;この習慣が既についてしまったコに去勢手術を行っても、この習慣をなくすことができないかもしれません)。
高齢な未去勢のワンちゃんで起こる会陰ヘルニアはおしりの筋肉が薄くなり、筋肉同士の合わせ目から腸管や前立腺、膀胱などが皮膚の下に飛び出して、場合により尿やうんちが出にくくなる病気です。必然的に高齢での手術になり危険度が増し、術式により術後も再発しやすく、腸管の変位が伴えば比較的困難な手術となり合併症も生じやすいですが、去勢手術がこの病気の予防となります。前立腺肥大、前立腺嚢胞などの前立腺の疾患も治療の一環として去勢が勧められます。未去勢犬で肛門周囲腺腫瘍が生じやすいこともあります。
精巣は生後しばらくしておなかの中からおまたの部分にでてきます。この様にして精巣が体温より低い温度で維持されることには意味があります。たまに片側の精巣がおなかの中に残ってしまっている(停留精巣)コがいますが、このような精巣は高齢になると腫瘍ができやすいのです。腫瘍の種類によっては大量にホルモンが放出されるようになり、血球の生産を止め、貧血になったり種々の感染症にかかりやすくなることがあります。通常去勢手術は開腹しませんが、このような場合には若いうちに停留精巣の摘出手術が強く望まれます。
フィラリア予防について
2015.05.15
フィラリア感染症は以前はワンちゃんの死因第1位の病気でした。
急性の症状はフィラリアの虫のために右の心臓の中の血流障害や弁の閉鎖不全がなどが起こり、急な症状の悪化がみられていきなり倒れることもあります。慢性症状では肺動脈の中にフィラリアの虫をためてしまい、肺の血管が狭くなったりつまったりする状態から肺血管の血圧が上昇し、心臓の機能が低下します。お腹の中に大量の水をためる、痩せる、食べなくなる、等が特徴です。
鳥取県の西部地区では予防を適切に行わなかったワンちゃんでフィラリア感染が散見されます。
室内に飼っておられる方も蚊が室内に入ってくる状況であれば、また、たまにワンちゃんを屋外に連れ出すことがあれば、フィラリア感染の可能性は否定できません。
フィラリア症は、予防薬を使うことで確実に予防することのできる病気です。ですので、この病気に愛犬が罹患するか否かはオーナーさんの意識次第と言い切ってしまってもよいかもしれません。
当院ではフィラリアのみに効く錠剤(味付き)のタイプを用意しています。予防は原則として蚊が飛び始めてから1ヶ月後くらいに開始し、蚊が飛び終わって1ヶ月後まで続けます。ですので当院では5月末~6月初めあたりから11月末~12月初めまでをフィラリア予防の時期としております。1年間有効の注射の予防薬は、薬効成分が体内に残存しつづけることから獣医師の間でも使用の是非について意見が分かれるところです。当院ではこの注射のタイプの予防薬は取り扱っておりません。
シーズン終わりあたりの予防が不十分となり、感染してからフィラリア予防でない時期を向かえると、2月あたりに急性フィラリア症の症状を呈する場合があります。シーズン終わりあたりの予防もしっかり行いましょう。
なお、ネコでは現在のところシーズン中の積極的なフィラリア予防が一般的にはなっておりませんが、ネコのフィラリア症発症の報告は米子でもあります。ネコでは犬のようにフィラリアの多量寄生はおこらず、少量の虫が迷入した組織での症状を示すため、犬のように典型的な症状はありません。また少量寄生のため、検査で引っかけるのが難しいということもあります。フィラリアに加えノミ、耳ダニや腸内寄生虫もカバーするお薬がスポットタイプで存在しますので、特に外に自由に出る子であれば、この様なお薬を1ヶ月毎で使用するようにされるのがよいのではないでしょうか。
ノミダニ予防
2015.05.15
当院ではイヌ用、ネコ用ともにノミダニ予防薬は首筋につける液体(スポットタイプ)のものを常時ご用意しております。処方のいらない(したがって診察のいらない)お薬になりますので、飼い主の方のみの来院でも購入いただくことが可能です。
ノミ、ダニのスポットタイプではなく錠剤として現在販売されているお薬は現在国内販売の無くなった一種類を除き、全てがイソオキサゾリン系という一群のお薬に属します。この成分は非常にまれな例ながら副作用として神経症状を示すことが米国で報告されています。そのため当院ではいずれの錠剤のタイプのノミ、ダニ薬も常備をして服用をお勧めすることはしておりません(この副作用の可能性を説明させていただき、それでも購入を強く希望される飼い主の方に限り錠剤のタイプのものを取り寄せさせていただいております)。
重症熱性血小板減少症候群(STFS)のヒト、イヌでの感染が県内で報告されました。犬猫のノミダニ薬のほとんどがまずダニに吸血され、その際に薬効成分をダニが血液と同時に吸い入れることが前提ですので、吸血によりダニから移るウイルスをノミダニ薬が完全に止めることはおそらくできません。それでも過度の吸血を止めるためにノミダニ薬は使用することは最低限必要でしょう。そのうえで、特にダニのつきそうな草むらなどにはヒトも咬まれますのでイヌネコを自由に入り込ませないという注意が必要かと思います。
ちなみにノミダニの予防の時期はおおよそフィラリア予防の時期と大きく変わらないと考えていますが、可能性としてノミの卵は人が外から持ち込んだ場合に室温が10度以上あれば冬の間もワンちゃん、ネコちゃんに感染の可能性があります。大型犬であれば冬でも外で長時間の散歩が必要になるでしょうから、ノミダニの予防が必要になるでしょう。
狂犬病予防注射について
2015.04.28
ワンちゃんを飼っておられる方は年一回の狂犬病予防接種が法律で義務づけられています。
混合ワクチンを近々に接種した場合は、1カ月あけて狂犬病ワクチンの接種をお勧めしています。
狂犬病は現在日本にない病気ですが、この予防接種の法的義務と接種後の登録による接種状況の把握、動物の輸出入の管理、また島国という日本の地理的条件などから現在の状況が幸運にも維持されています。幸運というのはイヌでもヒトでも、一度発症すると確実に亡くなる恐ろしい病気であり、近隣のアジア諸国に普通にある病気だからです。
ちなみに予防接種の有無にかかわらず、お飼いのワンちゃんが他の人を間違って噛んだ場合、飼い主はその事象を都道府県知事に届け出する義務があります。鳥取県西部の方は米子保健所(生活環境局生活安全課)にお問い合わせください。
当院では狂犬病予防接種の実施に加え、米子市、境港市、西伯郡南部町と伯耆町の狂犬病予防注射済票交付も代行して行っております。
また、上記の地域のワンちゃんの新規登録も代行いたします。
(以下、蛇足です)
我々獣医師は、あくまでその一部が小動物臨床に携わっていますが、他の獣医師の仲間が例えば食肉衛生管理などに携わる仕事をしているように、本来の業務はペットに限らず広く動物を介して人の生活に影響する保健公衆衛生環境の維持です。狂犬病予防注射の接種の意味は国内に存在する全ての犬に予防接種を行うことによって、いざ狂犬病ウイルスが入り込んでも拡散しない環境をつくりあげることです。混合ワクチンと狂犬病ワクチンを同じように注射しているようにみえますが、狂犬病ワクチンはどちらかといえば我々獣医師にとっては保険公衆衛生上の防疫の業務の意味合いが強く、ですので全頭接種が法令上は基本となります。非常に高齢で、何かしらの疾患を有しているのでほぼ外に出ない、というコの狂犬病接種の是非に関する事例はよく見かけますが、それは個々のワンちゃんの健康のことを考えたときに成り立つ小動物臨床としての議論であり、接種後の副反応への対応を含め、小動物臨床にたずさわる側の獣医師がそれぞれのケースに対応すべき内容であるとは思います。しかし、例えば日本国内のペットは狂犬病ウイルスをもった動物と接する可能性が現状低いから接種することに意味がないであるとか、ワクチンによる抗体価の維持は個々によってばらつきがあるので毎年の一律のワクチン接種はどうなの、といった議論は、殊さら小動物臨床の側面に特化したものであって、国民の健康にかかわる保険公衆衛生上の狂犬病予防注射の本来の意味を無視しています。そして戦後日本で全頭予防接種の全頭接種を行い、国内から病気がない状態を達成し、維持をしてきた獣医師の先輩、同朋の過去から現在までの努力を顧ないものであると考えます。現在の日本に狂犬病がない状態だからこのような議論ができるわけで、防疫を行わない事の危険性は同じく日本になかったためワクチン接種も行われていなかった豚コレラの拡散の例が示す通りです。一端予防注射の全頭接種を無くし、仮に万が一の可能性でも将来病気が日本に入ってきてその恐ろしさを再認識してからまた発症犬の殺処分と予防接種の全頭接種を再開する、ということで果たして良いとは思えません。
ワンちゃんの狂犬病予防接種に関する飼い主の方々の御理解と御協力をお願いいたします。
混合ワクチンの注射について
2015.04.28
当院ではワンちゃんには5、もしくは6種までのものとそれ以上(7から9種)、ネコちゃんには3種と5種のワクチンを用意しております。
ワンちゃんの狂犬病は現在日本にない病気ですので、狂犬病という病気に対して国を挙げて伝播、拡散の防止をする防疫の意味合いの方が強いです(「狂犬病予防注射について」の項を参照下さい)。
それに対して混合ワクチンは国内に存在していて感染の可能性があり、発症すると重篤化する病気に対し、おうちで飼われているワンちゃんやネコちゃん個々での感染防止や症状の緩和を目的としています。
ワンちゃんでは初年度にまず狂犬病予防接種を優先した場合、少なくとも2週間あけた後に混合ワクチンの接種を行っております。
ワンちゃんの混合ワクチンについて当院では現在初年度は2か月齢から4か月齢の間に1か月間隔で3回接種し、次年度以降は年に一回の接種をお勧めしています。散歩に出る、特にドックランなど他のワンちゃんと接する機会があるコは、少なくともレプトスピラを含む7種以上のワクチン接種をお勧めしています。
コアワクチンの抗体価判定によるワクチン接種の是非の判定は現在行っておりません。ですのでコアワクチンのみの追加も行っておりません。また、おおよそ一年で抗体価が低下すると言われているレプトスピラのみのワクチンも用意をしておりません。
ネコちゃんの場合、初年度は2か月齢から4か月齢の間に1か月間隔で2回のワクチン接種を、そして次年度以降は現在1年に一回のワクチン接種をお勧めしています。
3種のワクチンのうちパルボ以外はネコカゼに対するものです。感染予防ではなく発症予防ですので、すでにネコカゼウイルスを有する子も積極的にワクチン接種する意味があります。
外に出て他の外ネコと接触する機会があるコならば白血病ウイルスをもらう可能性がでてきますので、5種のワクチンの接種をお勧めしています。白血病ウイルスを有するコは悪性リンパ腫を若年で発症する可能性が高くなります。
ネコワクチンによる将来的な腎数値の上昇の可能性が示唆されておりますが、これが決して腎臓病による死亡のリスクを上げるということではないため、ワクチンの毎年接種に関しては現行の接種間隔を継続しながら、更なる情報の収集に努めてまいります。