狂犬病予防注射について
2015.04.28
ワンちゃんを飼っておられる方は年一回の狂犬病予防接種が法律で義務づけられています。
混合ワクチンを近々に接種した場合は、1カ月あけて狂犬病ワクチンの接種をお勧めしています。
狂犬病は現在日本にない病気ですが、この予防接種の法的義務と接種後の登録による接種状況の把握、動物の輸出入の管理、また島国という日本の地理的条件などから現在の状況が幸運にも維持されています。幸運というのはイヌでもヒトでも、一度発症すると確実に亡くなる恐ろしい病気であり、近隣のアジア諸国に普通にある病気だからです。
ちなみに予防接種の有無にかかわらず、お飼いのワンちゃんが他の人を間違って噛んだ場合、飼い主はその事象を都道府県知事に届け出する義務があります。鳥取県西部の方は米子保健所(生活環境局生活安全課)にお問い合わせください。
当院では狂犬病予防接種の実施に加え、米子市、境港市、西伯郡南部町と伯耆町の狂犬病予防注射済票交付も代行して行っております。
また、上記の地域のワンちゃんの新規登録も代行いたします。
(以下、蛇足です)
我々獣医師は、あくまでその一部が小動物臨床に携わっていますが、他の獣医師の仲間が例えば食肉衛生管理などに携わる仕事をしているように、本来の業務はペットに限らず広く動物を介して人の生活に影響する保健公衆衛生環境の維持です。狂犬病予防注射の接種の意味は国内に存在する全ての犬に予防接種を行うことによって、いざ狂犬病ウイルスが入り込んでも拡散しない環境をつくりあげることです。混合ワクチンと狂犬病ワクチンを同じように注射しているようにみえますが、狂犬病ワクチンはどちらかといえば我々獣医師にとっては保険公衆衛生上の防疫の業務の意味合いが強く、ですので全頭接種が法令上は基本となります。非常に高齢で、何かしらの疾患を有しているのでほぼ外に出ない、というコの狂犬病接種の是非に関する事例はよく見かけますが、それは個々のワンちゃんの健康のことを考えたときに成り立つ小動物臨床としての議論であり、接種後の副反応への対応を含め、小動物臨床にたずさわる側の獣医師がそれぞれのケースに対応すべき内容であるとは思います。しかし、例えば日本国内のペットは狂犬病ウイルスをもった動物と接する可能性が現状低いから接種することに意味がないであるとか、ワクチンによる抗体価の維持は個々によってばらつきがあるので毎年の一律のワクチン接種はどうなの、といった議論は、殊さら小動物臨床の側面に特化したものであって、国民の健康にかかわる保険公衆衛生上の狂犬病予防注射の本来の意味を無視しています。そして戦後日本で全頭予防接種の全頭接種を行い、国内から病気がない状態を達成し、維持をしてきた獣医師の先輩、同朋の過去から現在までの努力を顧ないものであると考えます。現在の日本に狂犬病がない状態だからこのような議論ができるわけで、防疫を行わない事の危険性は同じく日本になかったためワクチン接種も行われていなかった豚コレラの拡散の例が示す通りです。一端予防注射の全頭接種を無くし、仮に万が一の可能性でも将来病気が日本に入ってきてその恐ろしさを再認識してからまた発症犬の殺処分と予防接種の全頭接種を再開する、ということで果たして良いとは思えません。
ワンちゃんの狂犬病予防接種に関する飼い主の方々の御理解と御協力をお願いいたします。